抜歯

プルマン

三好ヶ丘の空の下、9月27日午後2時半過ぎ。
窓に映る、とある歯医者さんの診察台。
空の色を眺めながら、目を閉じていた。
口を大きく開けながら、今この瞬間を遠い空から眺めていた。
麻酔を打たれて、後は歯が抜かれるのを待つだけの時間。
感覚が無いのは抜歯される歯の辺りだけだから、頭は冴えている。
どれだけの時間だったのだろう。
短いとは感じなかった。
それでもたった15分ぐらいのことだろうか。
診察台から遠くの空へ旅してた。
すごく遠い空から小さなわたしを眺めてた。
幸福に満ち足りた時は、こんな風に空から自分を見ることは無い。
ちょっと苦しい時やその場所に居たくない時。
心の逃げ場所に空がある。

 と言う事で、今日は抜歯の日でした。親知らずは4本とも抜いたはずなのに、「親知らずを抜きましょう」とこの前言われた時はびっくりしてしまった。「たまに、抜いてもまた生えてくることもありますし、以前抜いた時に取れずに残っていたのかもしれません」って。わたし、5回目の親知らず抜歯って。随分前、親知らずの抜歯で痛い目にあって、しかも数日顔が腫れていたことがあって、抜歯に関してはかなり臆病になっている。だから、抜歯予約の今日と言う日はかなり意識していた。でも無事済んで、やれやれ。何でも喉元過ぎれば何とやら、昨日までの重たい気分がもうどっかに飛んで行った。こんな些細なことの連続の毎日をなんとなく、窓に映していた午後だった。
 腹立たしさや感謝や楽しみや喜び、小さな失望や後悔・・些細なことの繰り返しがまた愛おしい日々なのだ。朝はめっきり涼しくなった秋にふとそんなこと思うのかな。繰り返し巡る季節に何をか思う、ってか。