まぜの風、あいの風

 スマホのカメラに、今日の写真が一枚もない。
 何にも撮らない日もあるんだなぁ。
 休みだったのをいいことに、朝は思いっきり好きなだけ寝ていた。
 ベッドから起きてリビングに行くと、邦ちゃんがいた。
 「あー思いっきり寝た。」
 「よう寝たなぁ、すっきりしたやろ。」
 「一人で何かもう食べてるの?」
 「ううん」
 「ほな、一緒にパン食べようか。パイナップルの載ったのにする?」
 「目玉とウインナーちょうだい。」
 「ふーん、コーヒー飲む?」
 と言って、洗濯機を回している間に朝食。
 お昼前から、この前邦ちゃんがスマホを買ったエイデンに出掛けた。契約者の名義変更のためだ。エイデンの中のソフトバンクは混んでいて、順番に受け付けるように銀行みたいに番号札を持たされて長いこと待たされた。座るところがあったので、持っていた文庫本を読み始めることにした。邦ちゃんは違う売り場に何か見に行き、一度戻ったもののまだ順番が来ないようなのでまた違う売り場に行ってしまった。おかげ様でゆっくり読めることが出来た。賑やかな店内の中、本に没頭していて、あれ、もしかしてわたしのこと忘れてる?と不安になったりするくらい。
 漸くカウンターに座ることが出来たけど、それからがまた長かった。なんだかんだと1万円近く要ることになってなんだか釈然としなくて、
 「なーんか、出費したね。これやったら何か美味しいもの食べれたな」と言いながら、美味しいものを食べるのを我慢するのではなく、「ランチ行こう」と言うことになって、邦ちゃんの言う通りに、おしどり寿司でお昼にした。
 帰りにスーパーへ寄って邦ちゃんはトビウオの刺身を買った。スーパーへ寄りたいのはお魚を見たいからなのだね。わたしがぐるりと回って買い物をしている間にしっかり吟味して美味しくてお値打ちなものを買ってくれる。
 家に帰ってしばらくしたら、「ちょっと手伝ってね。」と言われて庭に出た。先日切った藤の木の周りの片付けが中途半端だったのをスッキリすることに。残っている枝を切ってゴミ袋に詰め込む作業だ。そのあと「コーヒーちょうだい」と言うので、庭のテーブルにて温かいコーヒーを。淹れたのは末っ子が友達からお土産にともらったベトナムコーヒーだ。しばしこのコーヒーの話などしながら、昨日邦ちゃんが言ってた「まぜが吹いて来たなぁ」と言うのを思い出して、「ねぇ、まぜってどんな風のこと?」と言いながら、リビングに入ってスマホで検索するわたし。そんなゆるりとした午後だった。
 「まぜって南東の風で漁師が使う言葉やろ。今、北西から吹いてるなぁ、あいの風って調べて・・」
 「えっ、あいの風?」