斑鳩の町

斑鳩のお土産

 この町を後にして数えるぐらいしか帰って無かった。両親が暮らし、父一人になって暮らしていた町。帰る家はわたしが住んだこともない馴染みのない引っ越し先になるし。ものすごく疎遠でいた所だった。その町から今月7日に父を引き取り、今日は残りの荷物を取りに行きほんとにさよならなのだ。じわーっと変な感慨に浸っていた帰りの車の中だった。人生はいつもこんなはずじゃなかった、を繰り返す。
 邦ちゃんが借りてくれたハイエースに乗り込んで奈良に着いて、誰も居なくなった家に入り、軍手をはめて荷物の整理に取り掛かる。整理と言うより要るものを選んで持って帰るのだ。邦ちゃんは大物をわたしは棚の上の箱やタンスの中などを要りそうなものとそうでないものをどんどん仕分て行く。何かとお世話になった遠い親戚にあたるTちゃん夫婦が手伝いに来て下さった。来るなり「えっ!靴脱いでるの?」二人は靴のまま上がろうとしていた。そう言えばそうだね、もう取り壊しに掛かるのだし随分ほこりまみれだもんね。わたしも途中から靴をはいて(土足で)父が生活をしていた部屋の中を動いていた。
 邦ちゃんはテキパキ動いてくれる。お仏壇も整理をしてくれて、ほこりを払って運び出してくれた。丁寧にしまってある箱の中から一度も手を通してないようなものが出るわ出るわ。要るか要らないか分別するのが疲れて来て、とりあえず持って帰ってからどうするか決めようと思いだし、それも途中でいい加減疲れて来て後はもういいか〜となってくる。
 もういいかな、これぐらいで。そんな終わり方をして、手伝いに来て下さったTちゃん夫婦ともう一人Tちゃんのお兄さんも加わって、近くのお店でお昼を食べようと言うことになった。邦ちゃんは彼とは一度お葬式の時に会ったことがあるぐらいだったけど、彼らの明るさで何とも楽しい時間ではあった。「今度会う時は誰かのお葬式の時や。」なんて、関西人はジョーク好きだ。
 父の住んでた家のことを任せられるTちゃんに感謝、Tちゃんの奥さんにも感謝。テキパキ動いてくれて頼りがいのある邦ちゃんに感謝。わたしだけじゃ何もできなかった。ほんとにありがとう、そう思いながら帰って来た。
 


 Tちゃん夫婦からお土産をいただいた。お初だったけど、わたしが育った斑鳩の町のお菓子のようだった。オーブントースターで軽く焼いてから食べると、より美味しいと書いてあったのでそうした。ごちそうさま。