出会い

レーズンブレッド、チョコンパウンドケ

 19日(木)は仕事が終わって、友達の病室に少しだけ顔を見せて、その後で邦ちゃんが乗っている車の1年点検に行って来ました。 リコールもあったので、1時間以上掛かるということでしたので、近くのコーヒー屋さんで時間をつぶすことにしました。お天気も良く少し歩きたい気分でもありました。窓越しからの午後の陽ざしは透き通ったはちみつ色、綿毛が飛んでいるようなメルヘンチックな大きな窓をちらちら見ながら、持ってきた本を読んでいました。
 車の点検も済んで、さてお昼はまだだけどこれからどうしようかな、とも思いましたが車が邦ちゃんのなので、あまりふらふらせずに家に帰ることにしました。慣れない車ではふらっと行きたくなる気持ちも湧いてこないようです。真っ直ぐ帰るのもいいものだわ。録画しておいた「永遠の0」の1回目を観ました。映画では岡田准一扮するパイロットの役はテレビでは向井理です。録画したのはそのキャスティングによるところも大きいかもしれません。彼を観たいから。とは言うものの、戦争という恐ろしいものが作り出す命の軽視を思うと、つい独り言でテレビに向かって怒っていたりします。
 20日(金)は仕事帰りに長久手のコーヒー屋さんへと行きました。お店に着いて車から降りた時に、ゆっくりと歩いて同じくお店に入ろうとしているおばあさんがいました。ゆっくりとした足取りでお一人で。わたしはお店のドアを開けてどうぞーと言ってからおばあさんの後に店内へ。テーブル席が空いていたので座れそうでしたが、一人で来ていることだしカウンター席に座ろうとした時、おばあさんが「私がカウンターに座ります」と。どうやらおばあさんも一人でテーブル席に着くのを遠慮されてるように見受けました。「じゃぁ、よろしかったらここにしましょうか」と二人で一つのテーブル席に着くことにしたのです。

 わたしはすぐに注文しました。「ケーキセットでフレンチブレンドで」おばあさんはずいぶん迷って、わたしの頼んだケーキセットが来てからもまだ決まらなくて、ほんとにゆっくりと時間が流れているんだなぁ。そして漸く「私もケーキセットにしようかな。ホットと」いつもこんな風にのんびり時間がいくのね・・。
 天候のことや通り一遍の話をしたら、失礼して本でも読もうかなと決めていました。なんとなく「お近くですか」などと話している時、「昨日は雨水でしたし・・」と言う言葉を耳にして、あっ!もうちょっとこの方とお話したいなぁという気持ちが強くなりました。ご家族のことやいろいろ話を聞いているうちに戦時中のことにまで及びました。聞けば大正15年、昭和元年生まれの方でした。「だから私自分の歳が昭和と一緒なのよ」
 わたしの両親とあまり変わらないのに、こんなに話せる(と言うか、聞ける)ことに感激してしまって、もっとどんどん聞きたい気持ちになっていました。生々しい戦時中のこと、眼に浮かべることのできそうな通りを行く兵隊さんの行進や名古屋空襲のことや学生時代の周りの様子など。12歳には父親を兵隊として送り16歳の太平洋戦争突入二十歳の時の終戦、その後の何にもない時代のこと・・。まだまだ聞きたかったのですが、あっという間の2時間ほど。日が陰り始めて、そんなに長居もできませんのでお店を出ることにしました。お名前もお聞きしなかったのですが、またあのお店に行くと会えそうな気がします。帰り際にこやかに手を振ってくださいました。「暗い話してごめんなさいね」「いいえ、こんなお話を直に聞くのは初めてでした、ありがとうございました」心からそう思ったのです。ゆっくりした時間を心から楽しんで、その幸せを身をもってわかってらっしゃるんだろうな。