末っ子が新居に

プルマン

 朝から予報通りに雨が降っていた。それに寒そうだわ、と起きた時に思った。こんな日になったのね、君が新居に行く日。昨夜はベッドに入ってから少し目が冴えていた。いつもならすぐに眠ってしまうのに、珍しいこと。明日の朝、引っ越しする末っ子のことを思うとなんだか頭が冴えてきてしまったのだ。
 そして、今朝。ふと泣きそうになった。すぐに笑って自分をごまかしたけど、胸がきゅんとするような。ここのところ、荷造りっぽいことをして部屋がいつもと違ってきて、次から次に片付いて行くのを見ていた。いい歳の息子が結婚をして家を出るのはものすごくめでたいことに決まっているのに。こんな切ないような気持になるのは図らずもな感じだ。変なの、きっとすぐに心境は変わるはず。
 名古屋市の新居の近くで借りたレンタカーに自分の荷物を積んで、その足で彼女のお家に行って荷物を積んでから新居に。荷物が少ないこともあるのか引っ越し屋さんに頼まずレンタカーを借りて友達一人に来てもらって自分でやってのけた。彼女のお家に行って荷物を積んでから新居に着く時間と、新居に配送される冷蔵庫や家具が届く予定時間とが重なるために、わたしが新居に行って、先に来るかもしれない業者さんを待つことになった。
 行く途中、ご挨拶のお菓子とお昼ご飯にお寿司を買った。預かった鍵で新居をドアを開けた。思ったよりも広くて明るくて景色もいい。暫し、ひとりで新しい部屋をきょろきょろと。何にもない部屋。ここからスタートするんだね。ほほえましくただぼーっと見ていた。
 しばらくして、業者さんよりも末っ子の方が早く着いた。話声がすると思ったら、彼女のご両親も一緒に来られた。びっくりしたけどお会いできて嬉しかった。先日の初顔合わせ以来だ。来たついでにこれからもりころパークに行くんですって言われた。何か催しがあるみたいだ。車から荷物を降ろし終わって、直ぐに行こうとされたので、「もしよかったらおはぎ食べませんか?」「わー食べる食べる。」お二人ともほんとにフランクで好きだなぁ。

 昨日餡を作って今朝ご飯を炊いて、作っていた。友達が手伝いに来てくれるのでと思ったのと、何となく何か作りたくって。お重に詰めてお皿とお箸も一緒に、余計目に入れておいてよかった。段ボール箱の上に、お重を包んでいた風呂敷を広げて、にわか仕立ての小さなテーブルの周りには笑顔が並んだ。ほんと、このようなご両親でよかったわ。
 その後、お二人が行かれるのを見送って、友達が手伝いに来てくれて、業者さんが来て、わたしも帰ることにした。車で40分弱、途中買い物をして家に着いたときに、上着のポケットに新居のカギが入ったまま。すぐにメール。友達が取りに来てくれると言うのを、「それは悪いからわたしが行くわ」そして再び新居へと行くことになった。末っ子が引っ越したぽかんとした穴を眺めるのも束の間、そんな静かな気持ちになることより、また早く行くことに迫られていたから。それがよかったのかもしれない。体も疲れて気分も爽快だ。