大井川鉄道の旅

大井川鉄道へ

 週末に大井川鉄道に乗り寸又峡へと行きました。わたしが二十歳だったころ、発刊されたアンアンやノンノをよく読んでいました。旅の特集には胸をときめかせていたように思います。「寸又峡」(すまたきょう)と言う名が目に焼き付いた記憶は鮮明です。信州が大好きで、そこに載っている場所に憧れては一人旅していました。その中の一つ、寸又峡には行くことがありませんでした。何故心に残っているのかも、なぜそこには行かずにいたのかも、大した理由はないと思われます。
 土曜日の早朝出発して、車は新金谷駅前のパーキングに入れました。大井川周遊きっぷを買って、新金谷から千頭で一旦下車して千頭から奥泉までガタゴト揺れていきました。奥泉からは寸又峡温泉行のバスに乗り換えです。朝5時に家を出てそのバスの終点駅に着いたのが11時ごろでした。
 バス亭のそばのお店で山菜そばなど食べて、つり橋に向かって歩きました。

 大間ダム湖に架かっている「夢のつり橋」です。こうして写真を見てると、よく歩けたなぁ、なんて思ってしまうほどです。この日は空いていたようで、混み合うときには2時間ほどの時間待ちもあるとか。人数制限があって、一度に渡れるのは10人でした。若い二人ずれのカップルが多い中、老人ふたりでドキドキしながらそろりそろりと歩きました。死ぬまでに渡りたい世界のつり橋トップ10入りしているとか。人造湖のエメラルドグリーンが美しかった。

 宿には早めに入り、明るいうちから温泉にのんびり浸かりました。ひとりじめの露天風呂は最高でした。夕食では運ばれてくるご馳走を目の前にし、「今日はこれで夏越しの祓やな」などと言いながら、半年無事に過ごせたことや家族にとってもいいことがあったねと言いながら、わたしも少しお酒をいただいたりして。

 宿の朝、朝食前に新聞を読もうと降りてきました。朝刊が来るのは8時半ごろだと言うことで、前日の新聞を読んでいました。いつもと違う静岡新聞で、珍しくもありです。宿に泊まると、たいてい朝にはその辺りを散策するのですが、この日は私はしなくて邦ちゃんはやはりちょっと歩いたようです。
 8時過ぎに宿を出てから始発のバスで大井川鉄道奥泉まで、そこから南アルプスあぷとラインと呼ばれる井川線に乗り井川を目指します。



 車窓の風景はただ感嘆するばかり。乗っている鉄道そのものからも先ず、いつもと違う何かに誘われてはいるのですが、窓に広がる風景はどんどん日常からあっさり切り離してくれます。風も気持ちいい。
 終点の井川には5月に土砂崩れがあったため不通でしたので、一つ手前の閑蔵駅まで行くことにしました。そのまま乗っているだけではもったいないので、奥大井湖上駅で途中下車して、接岨峡温泉駅と言う次の駅まで1時間ほど散策するコースを歩くことにしました。

 接岨峡温泉駅では何年か前に来た時には日帰りで温泉に入ったことがありました。 秘境の駅にまたも来たんだなぁと言う思いでした。ここからもっと奥の最終地点まで井川線に揺られ折り返し、千頭駅までまた車窓を楽しみました。
 千頭から新金谷までのSLはたまたまトーマス号に空席があって、それに乗ることに。走っている沿道では畑の作業中の人や河原で遊んでいる子供たちや道路のふちに並んでいる人たちや大勢の方が、手を振っていました。トーマス号が走っているのを写真に撮る人たちも大勢いたことだと思います。こちらも笑顔で手を振って応えます。あっという間に終点の新金谷に着きました。車内は小さな子供連れの家族が殆どでした。わが孫も親に連れられていつかこのSLに乗る日があるのかも知れません。
 前日に止めたパーキングに着くと、ここに止めたのが昨日とは思えないほどもうちょっと前のような気がしていました。邦ちゃんと二人、週末の平凡で楽しい旅がありましたとさ。この平凡に心からの感謝。