奈良へ

 入院している父の所へと行って来ました。
 午後から先生とお話ができるということでしたので、2時ごろがいいのかなぁとその時間には着くように出かけました。そのあと、奈良の友人とゆっくり会って積もる話をたっぷりしようと楽しみにしていたんです。19時ぐらいまでに名古屋行きに乗れば明日仕事でも大丈夫だし。
 先月の20日に父が倒れていたのを近所の人に整形外科に診察に連れて行ってもらい、そこで脳梗塞ではないかということで今入院している救急指定の病院に行くとやはり脳梗塞だったのです。左側の手と足がしびれて動きにくかったようです。近所にいた人や民生委員さんに大変お世話になって父がそうしてベッドにいられたのでした。
 一人暮らしの父が心配な思いを、心の隅でずーっと長い間くすぶらせてきていました。どうしてもっと早くなんとかしなかったんだろうか・・子供はわたし一人なので、わたしのところに来ることを勧めてはみても頑なに首をウンと振りませんでした。いつか・・いつか・・・(きっと、急に電話が来る)と片隅で思ってた懸念が、訪れたんです。

 電話口で先生を通じて父がわたしのところに来るつもりでいることを聞いて、うれしくなってその父の気持ちの確認に病院に行ったのです。奈良にそのまま居たいって言ったらどうしよう!?とそればかり悩んでいました。これまで遠い存在だった、老人保健施設やホームや介護の事や・・もう頭の中は分からないから余計整理がつかなくってぐるぐる渦巻いていました。一人ぼっち離れたそんなところにどうしたらいいんだろうと思ったり、先の事が全然つかめなくってもがいていたんです。

 借りてる家の事も長年住んだ町を離れることも捨てられなかった家財のことも仕方がないと観念していた父でした。左側のしびれで思うように動かなくなった体はそんな風に、観念させてしまったのかしらとちょっとかわいそうにも思うのですが、いつまでもそうしてもいられませんものね。

 病院で、杖を持って歩くリハビリをしている姿・・
 力があって元気だったころの父を思い出していました。この感情がわたしはとてもうれしいのです。何十年も父に対してそんな風な感情は持ちませんでしたから。あ〜〜わたしも歳を取ったってことなのね・・って。

 今度来るときは退院してわたしの家に帰ろうねと言って病院を後にしたんです。


 父の病室にいるときからず〜〜と気になっていた友人からの電話が入らないのです。約束の時間はもうとっくに2時間は過ぎているのにということ。父の入院している病院もちゃんと伝えていなかったのもいけませんでした。
 何度も携帯と家電にコールしても静まり返った石の庭にいるような・・冷たい変な感じ。結局4時間ほど悩んだ挙句名古屋行きの特急に乗りました。
 彼女の身に何かあったのかとそんな悪いことへと思考が走りがちになってしまいます。めっちゃくちゃ楽しみにしてくれてた再会だし、当然何の連絡もないということはありえないし・・・いったいどうしたの〜〜〜!


 父の事よりなによりもう彼女のことばっかりが心配で・・、そんなときやっと携帯が鳴りました! 
 家に帰り着いたころだったんです。彼女の声を聞いて、「どうしたの?だいじょうぶ!?」って叫んでしまいました。
 ひたすらひたすら謝る彼女。はぁ〜〜〜、携帯がなくってず〜〜と捜していたんです。
 あぁ、便利なものに頼っていたね・・何にも決めないで「じゃぁ、携帯でねっ!」って、それはほんとに恐ろしい!

 「かんにん、かんにん、かんにん、かんにん・・」そう言ってた彼女の声がこだまします(笑)